6月 3日(日) 東京・吉祥寺:ROCK JOINT GB 「遠藤賢司『不滅の男』第3弾!」
【出演】遠藤賢司バンド(遠藤賢司[Vo][G]、湯川トーベン[B]、石塚俊明[Dr])
開場予定時間が過ぎてもまだリハーサルが終わらない。
本番さながらの熱量を放った音がライブハウス外まで漏れて薄く聴こえている。
約10分押しで会場に入ればステージ中央、弾き語り用に設置された椅子がいつもと違って新しくなっている。
背凭れには華やかな和柄の布が掛けてあり、遠藤賢司の千社札とお守りが貼られてあり、
細かな処にもエンケンさんならではのステージに掛ける創意工夫のこだわりや情熱が垣間見られる。
BGMにポール・モーリアの【恋はみずいろ】が流れ、客電が降りる。
緑色の『惚れた!惚れた!』唐草柄のシャツをお召しになられたエンケンさん、
ライブ進行のメモを挟んだバインダーを持って颯爽とご登場!
YAMAHAのFG-180・二郎で【ちゃんとやれ!えんけん!】
ライブ一曲目であるにも関わらず、この一曲だけでライブを終わらせるかと思わせるクライマックス感!
後になにが起ころうと「今、この瞬間をちゃんとやる!」気持ちがビシバシ伝わってくる。
続いて【夜汽車のブルース】
蒸気機関車が走る轟音が迫ってくる情景が見える!
強力なストロークを生み出す右腕の力強さよ!
曲の終盤辺りは流石に耐え切れず、生ギターの太い6弦5弦がザクザク切れてしまう。
ローディーさんが走って換えの生ギター三郎を運んでくる。
エンケンライブではよくあるアクシデントなのだが、この一連のやりとりの緊張感も物凄いのだ。
ギター交換の間はハーモニカで演奏を繋いで緊張感を継続し、決して曲の世界観を中断させない。
「今日は来てくれてありがとう。エンケンですこんにちは。ポッポー!!」とテンション高く挨拶。
会場も「ポッポー!」と拍手で応える。
「いつものように僕は象形文字で歌います。象形文字は良いね。英語でなんか歌いたくねえや。
1万人なら1万人、今日入ってる分のお客さんと、僕は向かい合って対決をします。
一人一人の人生と対決して、お客さんが「う~ん。コレは違うな」とか「俺のこと当たってるな」とか
なんとなくポッポー!っと思ってくれたら嬉しいです。来てくれてありがとう」
「今日昼にライブハウスの事務所にいたら電話が掛かって来て、誰もいないからつい出たんですけど、
向こうもエンケンか?と思ったみたいで。
沈黙の後に「今日チケットありますか?」って聞かれて「知りませ~ん。僕はエンケンです。」って。
その人来てくれたかな?」
クスクス笑いの観客の中から手を挙げたお客さんに気付いて「おっ!来てくれてありがとう!」
「なんか電話で冷たかったから来てくれないのかと。チケットあって良かったね~」
演奏中の厳しい表情はいったい何処に?!優しい雰囲気に包まれた会場拍手。
しかし生ギターのチューニングを確認し始めると、再び真剣な表情に変わって、会場もまた緊張感に満ちる。
生ギター三郎で【心の奥まで抱きしめて】
恋ってなんて苦しいのだろう、と顔中皺だらけになるくらい苦悶の表情で叫ぶ。
僕はここにいるよ、と訴えかけてくるハーモニカの音色も胸に突き刺さり、熱い想いがぐんぐんと迫ってくる。
生ギターのペグにプラプラとお守りが3個つけてある。
「僕は形の無い神道が好きです。例えばなんとか大社とかじゃなくて、
山の中の石ころを拝んだりするのとかすごく好き。
でもお守りは面白いから、あっちこっちに付けて。どっか守られてるような気もする」
「8月8日にディスク・ユニオンから新しいライブアルバムが2枚組みで出ます。
タイトルはまだ決まってなくて選曲中で・・・もう決まってなくちゃいけないんだけど。
タイトルは『ハイパーエンケン』になると思います」
類稀なネーミングセンスに会場は爆笑!
「6月16日は渋谷のクアトロで東京うたの日に出ます。
東京うたの日はBYGの安本さんが主催してて、安本さんはすごく音楽が好きで。
毎回俺を降参させる為に若い奴を連れてくるような。
安本さんは全国のライブハウスを回り歩いて「良いバンド無いか?!」って探してきてくれるんだよ。
今年はいなかったとかって言って。でも俺達は一生懸命やりますので来て下さい」
指先に鉤爪ピックを付け、更に生ギターに大き目の鈴を付けて次の曲の演奏準備をするエンケンさん。
ということは次の曲は・・・
【猫が眠ってる】
激しい演奏に指に嵌めた鉤爪ピックが外れ掛けそうになって辛そうにな場面がありながらも、
まるですぐ側に猫がいるような気配を感じさせるような情景を描く。
チリンチリンと鈴が揺れ、生ギターのボディーが叩かれギターを掻き毟られる度、
ザザザザザッ・・・と視界に砂嵐がかかったような気がして、ずっと聴いていると精神が不安定になりそうだ。
エンケンさんのブログで紹介されていた新しいグレッチ・ホワイトファルコンがついに登場!
「ブログを見た人は知ってるかも知れないけど、先代のホワイト・ファルコンが旦那で、
白鷹天轟と言いまして、コレは白鷹深雪です。もしかしたら吹雪に変わるかもしれません」
「ストラップも赤いところは自分で染めて。コレは吸血譜です!血を吸ってます」
何故そんな恐ろしい設定にしたのか・・・。
「白鷹深雪は今日がデビューです!よろしく」会場、拍手。
どの曲で華々しいデビューを飾ることになるのか?!と期待に胸膨らませていたらまさかの!
アルバム・幾つになっても甘かあネェ!収録の【ごめんね】とは・・・!予想外過ぎる!!
白鷹深雪がすすり泣くような悲しい音色で後悔や自己嫌悪、疑いなどあらゆる負の感情を搾り出すように歌う。
泣き叫ぶハーモニカも胃がキリキリ捻じれそうに苦しくなる。
歌うエンケンさんの表情も、顔中苦悶の皺を寄せてクシャクシャだ。そうでなきゃこんな苦しい声で歌えない。
テンションの高い演奏よりも、じんわり精神的に追い詰められないと生まれないであろう曲の演奏の方が
辛いのかもしれない。
生ギターに換えて【満足できるかな】
ギリギリギリィ~っとノイズスクラッチを入れて、伝家の宝刀ギロチンギターを決めるか?!と、
会場にも手に汗握る緊張が漲る。
ギリギリギリィ~・・・
ギリギリギリギィ~・・・(まだ切れない)
ギリギリギリィ~・・・・
鬼の形相で「いぃィ~~~~!!」と歌舞伎の睨みのような表情で叫び、すわ大惨事!一巻の終わりか!
と思いきや、ポロリン♪と可愛く弾いて脱力系のオチ。
期待を外されて思わずガクっとなって。会場は、あはは。「やられちゃったなあ」みたいな雰囲気になる。
白鷹深雪に持ち替えて【ド・素人はスッコンデロォ!】
白鷹深雪も先程披露された曲までは切ない声で鳴いていたのに、すっかり表情を変えてえげつない咆哮を放つ!
ギターを叫ばせたままにドラムセットに移動して、2本の太いスティックを鷲掴みに握り締め、
ドカンドカン太鼓を叩く!!
手加減全く無しに力の限りに叩くから、ローディーさんが走ってシンバルのネジの緩みを直しに来る。
気の済むまで叩いたらスティックを放り投げて、ステージ中央に戻り血を吐きそうな・・・どころか、
間違えてそのままオエッっと内臓まで出てきそうな声の出し方で叫ぶ!叫ぶ!
演奏終了後は流石に、ハァハァ・・・と息が荒くて苦しそうだ。呼吸を整える為に深呼吸。
常備されているドリンクをグビグビ飲む。
次の曲の準備をしようとしたら、クラっと立ち眩みを起こしてフラっとなる!危ない!
「ここからまだまだ、苦難の旅路が続きます」
ゼエゼエ言いながら笑って、でも眼は笑ってないエンケンさん。
本当にそう。命を削って演奏している。会場、応援の拍手。
エンケンさんに紹介されて、ステージに遠藤賢司バンドメンバー 湯川トーベン[B]、石塚俊明[Dr]登場!
「来年また僕のBOXが発売されます買ってね。損はさせません」会場、拍手。
「まだ仮のタイトルですが、さっき言ったハイパーエンケンにも、トシとトーベンも登場します」
「トーベンは神無月というバンドのアルバムがそこで(物販コーナー)で売ってます!
前も言ったんですけど、神無月は区分けするとピンクフロイドとか・・・
(バンド名が思い出せなかったのか適当に)その辺と、はっぴいえんどを足したようなバンドです」
適当に説明されて「余計分からないよ!」とツッコむトーベンさん。
エ 「じゃあもう言わない!言わないよ!本当は嬉しいくせに!
この前のライブのMCで褒めたら、すごく売れたらしくて「また言ってくれる?」言ったくせに~!」
スネるエンケンさんに会場大爆笑!
エ 「僕は本当に神無月が好きで。ピンク・フロイド、はっぴいえんど、頭脳警察と、同じに並べて下さい!
神無月の湯川トーベン、エンケンバンドです!」会場、拍手。
エ 「やっと『湯川潮音の父』から抜け出せるね。良かったね」
ト 「そう言われても(苦笑)・・・でもホントにどこに行っても『潮音の父来たる!』って書いてあるんだよ」
冗談で言ったのにホントに!?申し訳なく思ったのか「でも俺もエノケンバンドとかよく言われるよ!」と、
訳の分からないフォローをするエンケンさん・・・(笑)
「僕はこの間渋谷のオーチャード・ホールにリチャード・クレイダーマンを見に行きました。すごく良かったです。
僕はエレーヌ・グリモーやポール・モーリアと同じに並べています。
ポール・モーリアはすごいよ!恋はみずいろなんて素晴らしいし、本当に音楽が好きなんだね!」
「音楽は本当に好きな人がやってほしい。ただ音符を正確に早く弾くだけのなんて大嫌いです。
そんなのだれだって出来るから、もっと創造逞しい国になりましょう」
「東電はいったいなんなんだろうね。甘粕大尉って昔関東大震災の時に、
アナキストの大杉栄と伊藤野枝を殺して、それで満映の一番偉い人になって。なんでそうなるんだ?
東電もそうだね。肩書きが好きなんだね。結局。
それは創造性の無い国だよ。昔から何にも変わってない。一億総懺悔を迫られるね。
瓦礫の撤去とか自分のとこでやれば良いと僕はそう思うんだよね。
東電が全部責任を取れば良い。俺たちだって一人一人がコンサートやって責任とるんだよ。
それが仕事だよ。プロだよ。国家の仕事で甘ったるくやってるから、お上の仕事になるんだよ。
親父狩りとかやるんだったらやってほしいくらいだ」
「今年もミチロウに頼まれて、福島で歌います。多分ミチロウと二人で遠藤兄弟で【不滅の男】を歌います。
【不滅の男】
バンド編1曲目にこの曲が来ると、やはり盛り上がる!
それぞれに自分の名前、看板を背負ってステージに立っている責任感というものが感じられるのが
終盤の見せ場である四股踏み!
「トシです!」
「トーベンです!」
「遠からん者は音にも聞け
近くば寄って目にも見よ
我こそは千代に八千代に我が世の男
姓は遠藤 名は賢司
人呼んで天下御免の純音楽家 エンケンなるぞ!
してある時もこの時も不滅の男!!」
名乗りを上げ、上手・下手・中央の順に圧巻の四股踏みをキメた!!
その辺の若いオニイチャンよりも高く脚を上げられる65歳エンケン!カッコイイ!
指を三本立ててのワッショイサインもバッチリ!観客もワッショイサインで応える。
続いて【ブルースに哭く】
歌詞は結構情けない男の泣き言だが、音はブンブンと大振りで男らしい演奏!
続いて【俺が死んだ時】
エンケンさん65歳、トシさん62歳、トーベンさん58歳。エンケンバンドのこんな熱いライブを、
いったいあと何回見ることが出来るのか・・・この曲を聴くとそんな考えたくないことを考えてしまう・・・
お願いだから、エンケンさんが亡くなられてから「いつかライブ見たかった」なんて言ってほしくない。
どうか沢山の、ひとりでも多くの音楽ファンにライブを見に来てほしい。
ハードな演奏で会場は熱気に包まれる!演奏後、一番前の観客にピックを渡すエンケンさん。
「一度やってみたかったんだよね~!」
たまにはそんなファンサービスもカッコイイです!
【外は雨だよ】
白鷹深雪の優しく切ない音。少し力が入りすぎたのか、演奏間も無く弦が切れる。
その間トシさんとトーベンさんがアイコンタクトを取りながらの息の合ったフォロー。
深雪に換わって白鷹天轟が優しい音から段々と激しくなって、すっかり表情を変えて熱く叫んだ。
続いて【荒野の狼】
エンケンバンドならではの人気曲。狼が駆け抜ける情景がありありと目に浮かぶ。
エンケンさんは中央奥のアンプに向かい合って、客席に背中を向けて自らの音世界と向き合っている。
熱い大きなうねりが弧を描いて、天に昇っていくような音だ。
迫力の余韻に浸りきって、拍手をすることも忘れるくらいに圧倒され静まりかえった観客たち。
次は何が飛び出してくるだろうと構えていたら、
シリアスな雰囲気からコミカルタッチな【幾つになっても甘かあネェ!】
バンドの持つ振り幅の大きさに翻弄されながらも「ポポーッ!!♪」と盛り上がる会場。
【俺は勝つ】
これは近年意外とやりそうでなかった、バンド演奏では珍しい1曲!
ギターを再び白鷹深雪に交換して【プンプンプン】
貫禄の有る白鷹天轟に比べて、白鷹深雪はやはり若い音がする。
この曲は初めてエンケンさんがエレキギターでレコーディングした曲。
それを思うと初々しい深雪の音が、若かりし頃のエンケンさんの音と変わらず繋がってると思えて、
その頃を知らないファン暦の浅い自分としては嬉しく思えた。
ギターを白鷹天轟に交換して【東京ワッショイ】
顔面は皺だらけ額の血管ビッキビキに浮かせてのなりふり構わぬ大絶叫。
しかしエンケンが苦しめば苦しむ程、観客は大喜びでノリノリになる心臓破りのナンバーに息も絶え絶え。
【踊ろよベイビー】
猫になりきって「にゃーにゃーにゃー!!」のシャウトで始まるセクシーロック。
エンケンバンド名物猫踊りも炸裂!!
途中から演奏そっちのけでエンケン(猫)トシ(犬)トーベン(豚)がにゃあにゃあワンワンフゴフゴと
戯れ出したと思えばケンカを始めて、最後には円陣組んで仲直り、という小芝居が展開される始末。
バンド内仲良し円満で何よりです。楽しそうで可愛くて見てるこっちまでニコニコしてしまう。
最高に盛り上がってバンドメンバー全員退場。
アンコールを要求する手拍子と声援が止まず、エンケンさん再登場。
生ギターを渡され、マイク前に立つエンケンさん。
「ミッシェル金谷です」とローディーさんを紹介。
「今日はサッカーの試合ですね。オマーン戦…なにいやらしい事言ってんの(笑)」なんてノリ突っ込み。
「あの曲やらなかったね」とか「懐かしいあの曲やったな」とか「あの「曲やらなかったな」と思ったら、
また来て下さい。来てくれてありがとう」会場、拍手。
ローディーさんが何度も何度もマイク位置を調整したというのに、ステージ下手からひょいとフロアに降り、
観客の中に飛び込んで会場真ん中辺りに移動するエンケンさん。
「名古屋の僕と同い年の友人が亡くなりました。でもきっとここで聴いてくれてると思います」
「ここ」とはあるお客さんの肩をポンと叩いて。どうやらご友人の息子さんのよう。
【夢よ叫べ】
マイク無しの完全生音のみでの演奏なのに、よく声が、音が不思議な程よく通る。
いつもはステージでエンケンさんの姿だけだが、この日初めて聴衆の表情まで見ることが出来た。
目を閉じて聴く者、ハンカチで涙を拭く者、光景を目に焼き付けようとする者、歯を喰いしばる者、
それぞれにエンケンさんと対峙している。
エンケンさんは前、後ろ、左右、向きを変えて会場全員と眼と眼を合わせながら、
ライブの冒頭で宣言した通り、観客全員の人生と向き合って歌う。
最後にぐる・・・っっと大きく絶叫大回転を決めた。
誰かが「エンケンありがとう!」と言った。
続いて「エンケンありがとう!」「ありがとう!」「ありがとう!」と沢山の人が続いた。
なんて尊く美しい光景だろう。
ステージに戻ったエンケンさん。大声援の中を大見得を切って拍手喝采を思う様浴びる。
「トシ!トーベン!」とバンドメンバーを呼ぶと再登場したトシさんトーベンさんにも大きな拍手。
トシさん、ステージ衣装から私服へ着替えの途中だったようで、なんと上半身裸で登場(笑)
最後にマニアックなファンサービス(笑)でライブは無事に終演。
【出演】遠藤賢司バンド(遠藤賢司[Vo][G]、湯川トーベン[B]、石塚俊明[Dr])
開場予定時間が過ぎてもまだリハーサルが終わらない。
本番さながらの熱量を放った音がライブハウス外まで漏れて薄く聴こえている。
約10分押しで会場に入ればステージ中央、弾き語り用に設置された椅子がいつもと違って新しくなっている。
背凭れには華やかな和柄の布が掛けてあり、遠藤賢司の千社札とお守りが貼られてあり、
細かな処にもエンケンさんならではのステージに掛ける創意工夫のこだわりや情熱が垣間見られる。
BGMにポール・モーリアの【恋はみずいろ】が流れ、客電が降りる。
緑色の『惚れた!惚れた!』唐草柄のシャツをお召しになられたエンケンさん、
ライブ進行のメモを挟んだバインダーを持って颯爽とご登場!
YAMAHAのFG-180・二郎で【ちゃんとやれ!えんけん!】
ライブ一曲目であるにも関わらず、この一曲だけでライブを終わらせるかと思わせるクライマックス感!
後になにが起ころうと「今、この瞬間をちゃんとやる!」気持ちがビシバシ伝わってくる。
続いて【夜汽車のブルース】
蒸気機関車が走る轟音が迫ってくる情景が見える!
強力なストロークを生み出す右腕の力強さよ!
曲の終盤辺りは流石に耐え切れず、生ギターの太い6弦5弦がザクザク切れてしまう。
ローディーさんが走って換えの生ギター三郎を運んでくる。
エンケンライブではよくあるアクシデントなのだが、この一連のやりとりの緊張感も物凄いのだ。
ギター交換の間はハーモニカで演奏を繋いで緊張感を継続し、決して曲の世界観を中断させない。
「今日は来てくれてありがとう。エンケンですこんにちは。ポッポー!!」とテンション高く挨拶。
会場も「ポッポー!」と拍手で応える。
「いつものように僕は象形文字で歌います。象形文字は良いね。英語でなんか歌いたくねえや。
1万人なら1万人、今日入ってる分のお客さんと、僕は向かい合って対決をします。
一人一人の人生と対決して、お客さんが「う~ん。コレは違うな」とか「俺のこと当たってるな」とか
なんとなくポッポー!っと思ってくれたら嬉しいです。来てくれてありがとう」
「今日昼にライブハウスの事務所にいたら電話が掛かって来て、誰もいないからつい出たんですけど、
向こうもエンケンか?と思ったみたいで。
沈黙の後に「今日チケットありますか?」って聞かれて「知りませ~ん。僕はエンケンです。」って。
その人来てくれたかな?」
クスクス笑いの観客の中から手を挙げたお客さんに気付いて「おっ!来てくれてありがとう!」
「なんか電話で冷たかったから来てくれないのかと。チケットあって良かったね~」
演奏中の厳しい表情はいったい何処に?!優しい雰囲気に包まれた会場拍手。
しかし生ギターのチューニングを確認し始めると、再び真剣な表情に変わって、会場もまた緊張感に満ちる。
生ギター三郎で【心の奥まで抱きしめて】
恋ってなんて苦しいのだろう、と顔中皺だらけになるくらい苦悶の表情で叫ぶ。
僕はここにいるよ、と訴えかけてくるハーモニカの音色も胸に突き刺さり、熱い想いがぐんぐんと迫ってくる。
生ギターのペグにプラプラとお守りが3個つけてある。
「僕は形の無い神道が好きです。例えばなんとか大社とかじゃなくて、
山の中の石ころを拝んだりするのとかすごく好き。
でもお守りは面白いから、あっちこっちに付けて。どっか守られてるような気もする」
「8月8日にディスク・ユニオンから新しいライブアルバムが2枚組みで出ます。
タイトルはまだ決まってなくて選曲中で・・・もう決まってなくちゃいけないんだけど。
タイトルは『ハイパーエンケン』になると思います」
類稀なネーミングセンスに会場は爆笑!
「6月16日は渋谷のクアトロで東京うたの日に出ます。
東京うたの日はBYGの安本さんが主催してて、安本さんはすごく音楽が好きで。
毎回俺を降参させる為に若い奴を連れてくるような。
安本さんは全国のライブハウスを回り歩いて「良いバンド無いか?!」って探してきてくれるんだよ。
今年はいなかったとかって言って。でも俺達は一生懸命やりますので来て下さい」
指先に鉤爪ピックを付け、更に生ギターに大き目の鈴を付けて次の曲の演奏準備をするエンケンさん。
ということは次の曲は・・・
【猫が眠ってる】
激しい演奏に指に嵌めた鉤爪ピックが外れ掛けそうになって辛そうにな場面がありながらも、
まるですぐ側に猫がいるような気配を感じさせるような情景を描く。
チリンチリンと鈴が揺れ、生ギターのボディーが叩かれギターを掻き毟られる度、
ザザザザザッ・・・と視界に砂嵐がかかったような気がして、ずっと聴いていると精神が不安定になりそうだ。
エンケンさんのブログで紹介されていた新しいグレッチ・ホワイトファルコンがついに登場!
「ブログを見た人は知ってるかも知れないけど、先代のホワイト・ファルコンが旦那で、
白鷹天轟と言いまして、コレは白鷹深雪です。もしかしたら吹雪に変わるかもしれません」
「ストラップも赤いところは自分で染めて。コレは吸血譜です!血を吸ってます」
何故そんな恐ろしい設定にしたのか・・・。
「白鷹深雪は今日がデビューです!よろしく」会場、拍手。
どの曲で華々しいデビューを飾ることになるのか?!と期待に胸膨らませていたらまさかの!
アルバム・幾つになっても甘かあネェ!収録の【ごめんね】とは・・・!予想外過ぎる!!
白鷹深雪がすすり泣くような悲しい音色で後悔や自己嫌悪、疑いなどあらゆる負の感情を搾り出すように歌う。
泣き叫ぶハーモニカも胃がキリキリ捻じれそうに苦しくなる。
歌うエンケンさんの表情も、顔中苦悶の皺を寄せてクシャクシャだ。そうでなきゃこんな苦しい声で歌えない。
テンションの高い演奏よりも、じんわり精神的に追い詰められないと生まれないであろう曲の演奏の方が
辛いのかもしれない。
生ギターに換えて【満足できるかな】
ギリギリギリィ~っとノイズスクラッチを入れて、伝家の宝刀ギロチンギターを決めるか?!と、
会場にも手に汗握る緊張が漲る。
ギリギリギリィ~・・・
ギリギリギリギィ~・・・(まだ切れない)
ギリギリギリィ~・・・・
鬼の形相で「いぃィ~~~~!!」と歌舞伎の睨みのような表情で叫び、すわ大惨事!一巻の終わりか!
と思いきや、ポロリン♪と可愛く弾いて脱力系のオチ。
期待を外されて思わずガクっとなって。会場は、あはは。「やられちゃったなあ」みたいな雰囲気になる。
白鷹深雪に持ち替えて【ド・素人はスッコンデロォ!】
白鷹深雪も先程披露された曲までは切ない声で鳴いていたのに、すっかり表情を変えてえげつない咆哮を放つ!
ギターを叫ばせたままにドラムセットに移動して、2本の太いスティックを鷲掴みに握り締め、
ドカンドカン太鼓を叩く!!
手加減全く無しに力の限りに叩くから、ローディーさんが走ってシンバルのネジの緩みを直しに来る。
気の済むまで叩いたらスティックを放り投げて、ステージ中央に戻り血を吐きそうな・・・どころか、
間違えてそのままオエッっと内臓まで出てきそうな声の出し方で叫ぶ!叫ぶ!
演奏終了後は流石に、ハァハァ・・・と息が荒くて苦しそうだ。呼吸を整える為に深呼吸。
常備されているドリンクをグビグビ飲む。
次の曲の準備をしようとしたら、クラっと立ち眩みを起こしてフラっとなる!危ない!
「ここからまだまだ、苦難の旅路が続きます」
ゼエゼエ言いながら笑って、でも眼は笑ってないエンケンさん。
本当にそう。命を削って演奏している。会場、応援の拍手。
エンケンさんに紹介されて、ステージに遠藤賢司バンドメンバー 湯川トーベン[B]、石塚俊明[Dr]登場!
「来年また僕のBOXが発売されます買ってね。損はさせません」会場、拍手。
「まだ仮のタイトルですが、さっき言ったハイパーエンケンにも、トシとトーベンも登場します」
「トーベンは神無月というバンドのアルバムがそこで(物販コーナー)で売ってます!
前も言ったんですけど、神無月は区分けするとピンクフロイドとか・・・
(バンド名が思い出せなかったのか適当に)その辺と、はっぴいえんどを足したようなバンドです」
適当に説明されて「余計分からないよ!」とツッコむトーベンさん。
エ 「じゃあもう言わない!言わないよ!本当は嬉しいくせに!
この前のライブのMCで褒めたら、すごく売れたらしくて「また言ってくれる?」言ったくせに~!」
スネるエンケンさんに会場大爆笑!
エ 「僕は本当に神無月が好きで。ピンク・フロイド、はっぴいえんど、頭脳警察と、同じに並べて下さい!
神無月の湯川トーベン、エンケンバンドです!」会場、拍手。
エ 「やっと『湯川潮音の父』から抜け出せるね。良かったね」
ト 「そう言われても(苦笑)・・・でもホントにどこに行っても『潮音の父来たる!』って書いてあるんだよ」
冗談で言ったのにホントに!?申し訳なく思ったのか「でも俺もエノケンバンドとかよく言われるよ!」と、
訳の分からないフォローをするエンケンさん・・・(笑)
「僕はこの間渋谷のオーチャード・ホールにリチャード・クレイダーマンを見に行きました。すごく良かったです。
僕はエレーヌ・グリモーやポール・モーリアと同じに並べています。
ポール・モーリアはすごいよ!恋はみずいろなんて素晴らしいし、本当に音楽が好きなんだね!」
「音楽は本当に好きな人がやってほしい。ただ音符を正確に早く弾くだけのなんて大嫌いです。
そんなのだれだって出来るから、もっと創造逞しい国になりましょう」
「東電はいったいなんなんだろうね。甘粕大尉って昔関東大震災の時に、
アナキストの大杉栄と伊藤野枝を殺して、それで満映の一番偉い人になって。なんでそうなるんだ?
東電もそうだね。肩書きが好きなんだね。結局。
それは創造性の無い国だよ。昔から何にも変わってない。一億総懺悔を迫られるね。
瓦礫の撤去とか自分のとこでやれば良いと僕はそう思うんだよね。
東電が全部責任を取れば良い。俺たちだって一人一人がコンサートやって責任とるんだよ。
それが仕事だよ。プロだよ。国家の仕事で甘ったるくやってるから、お上の仕事になるんだよ。
親父狩りとかやるんだったらやってほしいくらいだ」
「今年もミチロウに頼まれて、福島で歌います。多分ミチロウと二人で遠藤兄弟で【不滅の男】を歌います。
【不滅の男】
バンド編1曲目にこの曲が来ると、やはり盛り上がる!
それぞれに自分の名前、看板を背負ってステージに立っている責任感というものが感じられるのが
終盤の見せ場である四股踏み!
「トシです!」
「トーベンです!」
「遠からん者は音にも聞け
近くば寄って目にも見よ
我こそは千代に八千代に我が世の男
姓は遠藤 名は賢司
人呼んで天下御免の純音楽家 エンケンなるぞ!
してある時もこの時も不滅の男!!」
名乗りを上げ、上手・下手・中央の順に圧巻の四股踏みをキメた!!
その辺の若いオニイチャンよりも高く脚を上げられる65歳エンケン!カッコイイ!
指を三本立ててのワッショイサインもバッチリ!観客もワッショイサインで応える。
続いて【ブルースに哭く】
歌詞は結構情けない男の泣き言だが、音はブンブンと大振りで男らしい演奏!
続いて【俺が死んだ時】
エンケンさん65歳、トシさん62歳、トーベンさん58歳。エンケンバンドのこんな熱いライブを、
いったいあと何回見ることが出来るのか・・・この曲を聴くとそんな考えたくないことを考えてしまう・・・
お願いだから、エンケンさんが亡くなられてから「いつかライブ見たかった」なんて言ってほしくない。
どうか沢山の、ひとりでも多くの音楽ファンにライブを見に来てほしい。
ハードな演奏で会場は熱気に包まれる!演奏後、一番前の観客にピックを渡すエンケンさん。
「一度やってみたかったんだよね~!」
たまにはそんなファンサービスもカッコイイです!
【外は雨だよ】
白鷹深雪の優しく切ない音。少し力が入りすぎたのか、演奏間も無く弦が切れる。
その間トシさんとトーベンさんがアイコンタクトを取りながらの息の合ったフォロー。
深雪に換わって白鷹天轟が優しい音から段々と激しくなって、すっかり表情を変えて熱く叫んだ。
続いて【荒野の狼】
エンケンバンドならではの人気曲。狼が駆け抜ける情景がありありと目に浮かぶ。
エンケンさんは中央奥のアンプに向かい合って、客席に背中を向けて自らの音世界と向き合っている。
熱い大きなうねりが弧を描いて、天に昇っていくような音だ。
迫力の余韻に浸りきって、拍手をすることも忘れるくらいに圧倒され静まりかえった観客たち。
次は何が飛び出してくるだろうと構えていたら、
シリアスな雰囲気からコミカルタッチな【幾つになっても甘かあネェ!】
バンドの持つ振り幅の大きさに翻弄されながらも「ポポーッ!!♪」と盛り上がる会場。
【俺は勝つ】
これは近年意外とやりそうでなかった、バンド演奏では珍しい1曲!
ギターを再び白鷹深雪に交換して【プンプンプン】
貫禄の有る白鷹天轟に比べて、白鷹深雪はやはり若い音がする。
この曲は初めてエンケンさんがエレキギターでレコーディングした曲。
それを思うと初々しい深雪の音が、若かりし頃のエンケンさんの音と変わらず繋がってると思えて、
その頃を知らないファン暦の浅い自分としては嬉しく思えた。
ギターを白鷹天轟に交換して【東京ワッショイ】
顔面は皺だらけ額の血管ビッキビキに浮かせてのなりふり構わぬ大絶叫。
しかしエンケンが苦しめば苦しむ程、観客は大喜びでノリノリになる心臓破りのナンバーに息も絶え絶え。
【踊ろよベイビー】
猫になりきって「にゃーにゃーにゃー!!」のシャウトで始まるセクシーロック。
エンケンバンド名物猫踊りも炸裂!!
途中から演奏そっちのけでエンケン(猫)トシ(犬)トーベン(豚)がにゃあにゃあワンワンフゴフゴと
戯れ出したと思えばケンカを始めて、最後には円陣組んで仲直り、という小芝居が展開される始末。
バンド内仲良し円満で何よりです。楽しそうで可愛くて見てるこっちまでニコニコしてしまう。
最高に盛り上がってバンドメンバー全員退場。
アンコールを要求する手拍子と声援が止まず、エンケンさん再登場。
生ギターを渡され、マイク前に立つエンケンさん。
「ミッシェル金谷です」とローディーさんを紹介。
「今日はサッカーの試合ですね。オマーン戦…なにいやらしい事言ってんの(笑)」なんてノリ突っ込み。
「あの曲やらなかったね」とか「懐かしいあの曲やったな」とか「あの「曲やらなかったな」と思ったら、
また来て下さい。来てくれてありがとう」会場、拍手。
ローディーさんが何度も何度もマイク位置を調整したというのに、ステージ下手からひょいとフロアに降り、
観客の中に飛び込んで会場真ん中辺りに移動するエンケンさん。
「名古屋の僕と同い年の友人が亡くなりました。でもきっとここで聴いてくれてると思います」
「ここ」とはあるお客さんの肩をポンと叩いて。どうやらご友人の息子さんのよう。
【夢よ叫べ】
マイク無しの完全生音のみでの演奏なのに、よく声が、音が不思議な程よく通る。
いつもはステージでエンケンさんの姿だけだが、この日初めて聴衆の表情まで見ることが出来た。
目を閉じて聴く者、ハンカチで涙を拭く者、光景を目に焼き付けようとする者、歯を喰いしばる者、
それぞれにエンケンさんと対峙している。
エンケンさんは前、後ろ、左右、向きを変えて会場全員と眼と眼を合わせながら、
ライブの冒頭で宣言した通り、観客全員の人生と向き合って歌う。
最後にぐる・・・っっと大きく絶叫大回転を決めた。
誰かが「エンケンありがとう!」と言った。
続いて「エンケンありがとう!」「ありがとう!」「ありがとう!」と沢山の人が続いた。
なんて尊く美しい光景だろう。
ステージに戻ったエンケンさん。大声援の中を大見得を切って拍手喝采を思う様浴びる。
「トシ!トーベン!」とバンドメンバーを呼ぶと再登場したトシさんトーベンさんにも大きな拍手。
トシさん、ステージ衣装から私服へ着替えの途中だったようで、なんと上半身裸で登場(笑)
最後にマニアックなファンサービス(笑)でライブは無事に終演。
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